「売れる売り場」と「売れない売り場」が出てきてしまう点については、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。店舗の集客力や販売力を高めるには、購買データの活用が重要であり、素早く分析を行って必要な施策を実行することが大切です。
この記事では、売れる売り場作りを行うための方法を詳しく解説します。
売れない売り場が抱える課題と特徴
売れる売り場を作っていくには、なぜ売れない売り場となってしまうかの原因を押さえておく必要があります。おもな3つの課題について見ていきましょう。
店内の回遊性が低い
売り場の販売力が弱い原因として、店内が回遊しづらい設計になっている点が挙げられます。顧客が店内を巡る順序や動線の設計は、店舗作りにおいてとても重要なポイントです。
たとえば、通路が狭くて歩きづらかったり、デッドスペースがあったりすることで、商品に触れてもらえる機会が減ってしまい、売上の減少を招くことになります。店舗設計やレイアウトを考える際には、顧客目線で検討してみましょう。
視覚的に入ってくる情報が少ない
売れない売り場となってしまうのは、「何を売っている店なのか分からない」と思われてしまうところも影響しています。良い商品をそろえていても、商品の見せ方が悪ければ顧客に気づいてもらえない可能性があります。
具体的な解決策としては、目立つ場所に売れ筋商品を配置したり、商品を並べ替えて魅力のある売り場を演出したりすることです。商品の陳列が長期間にわたって変更されていなければ、売れない売り場として判断される恐れがあります。
季節や流行に応じて、顧客が楽しく買い物ができる商品の配列を考えてみましょう。
ディスプレイやPOPを有効活用できていない
商品の魅力やブランドイメージを伝えていくには、ディスプレイやPOPの活用が欠かせません。そのためには特設コーナーを設置したり、ディスプレイをデコレーションしたりする工夫が重要です。
また、POP(売り場広告)も積極的に活用し、活気のある売り場を演出してみましょう。
売れる売り場をつくるには、購買データの活用が重要
効果的な売り場を作るためには、購買データの活用がとても重要です。具体的な活用事例なども踏まえて解説します。
小売業で購買データを活用する方法
小売業では実店舗やオンラインストアで収集した購買データを上手に活用することで、集客力や販売力を高められます。購買データを細かく分析していけば、来店予測や在庫管理を行いやすくなり、店舗の業務効率をアップさせられるでしょう。
また、購買データを活用することでプロモーションの精度も高められます。顧客の属性やニーズに沿った提案やオファーが行えるため、来店のきっかけや商品の購入に結びつけやすくなります。
そして、実際に購入した顧客から定性的なデータを取得し、販売直後のサイコグラフィックデータと結びつけてみましょう。サイコグラフィックデータとは、心理学的な特性データのことを指し、具体的には顧客の価値観・趣味・趣向・習慣などが挙げられます。
より精度の高いデータを得られることで、ペルソナの設定やマーケティング施策の優先順位付けに役立てられるでしょう。顧客がなぜその商品を購入したのか心理的な部分を分析することで、効果的な売り場を作ることに活かしていくことが大事です。
うまく活用している事例を紹介
具体的に購買データを活用するには、すでに成功している企業の事例から学ぶことが有効です。ここでは、4社の事例を基に活用事例を見ていきましょう。
ヤクルト
乳酸菌飲料メーカーのヤクルトは顧客の購買データだけではなく、広告へのアクセスデータやGoogleの検索結果など幅広いチャネルから収集したデータを分析することによって、売上を高めています。社員が個別に作成していたデータを一元的に管理し、小売店からもシステムにアクセスできる環境を整えました。
自社のデータだけでなく、外部からのデータも取りこむことでデータそのものの精度を高めています。多角的なデータ分析によって、無駄のない的確なマーケティング戦略が立てられるようになりました。
True&Co
アパレルブランドのTrue&Coは、顧客の購買データや返品データなどを分析することによって独自のシステムを開発しています。メーカーごとのサイズのバラつきを数値化することで、顧客の体にフィットしたブラジャーをオンラインで購入できる仕組みを整えました。
初回アクセス時に、日頃着用しているブラジャーのサイズやフィット感、ブランド名などの基本情報を登録することで、それ以降の買い物では顧客にフィットする商品のみが表示される仕組みを実現しています。
Amazon
インターネット通販大手のAmazonは、顧客データの活用に早くから取り組んできた企業です。商品を購入するために会員登録を行い、顧客データを活用する流れを作った企業であり、顧客一人ひとりに適した広告表示を行うことができるのはデータを的確に活用しているからに他なりません。
Amazonは顧客の購買行動そのものに大きな変化をもたらしている企業で、システムの開発や流通に積極的な投資を続けています。
スターバックス
大手コーヒーチェーン店のスターバックスでは、サイコグラフィックデータを活用して顧客のセグメンテーションを実施しました。同社がカフェ事業を始めた1980年代後半は喫煙できる喫茶店が多くありましたが、喫煙の有無に関するサイコグラフィックデータを基に、タバコを吸わない人やニオイが苦手な人をメインターゲットに設定しました。
タバコのニオイを気にせずに利用できる店舗づくりを進めた結果、世界中に多くの店舗を展開する企業に成長し、顧客の心理的特性をマーケティングに活かした事例だといえます。
購買データを活用するときの注意点
購買データを分析する手法としては、クラスター分析・行動トレンド分析・RFM分析などがありますが、分析手法そのものにこだわり過ぎる必要はありません。むしろ、購買データは時間が経過すると価値が低くなるので、定期的に分析し直すことが大切です。
クラスター分析とは大きなグループから、似たものを集めてグループ分けをする手法であり、行動トレンド分析はどのような顧客層がトレンドを作り出しているかを分析する手法です。そしてRFM分析は、最新購買日・来店頻度・累計購入額の3つの指標から顧客をランク付けするもので、それぞれの特徴を踏まえたうえで、自社の商品や顧客に合った分析手法を試してみましょう。
電子レシートで積極的に購買データを活用してみよう!
顧客情報や購買データを上手に活用するには、データの一元管理や分析を行うサイクルを決めることが大切です。加えて、電子レシートの導入もあわせて検討してみると、より効果的にデータ活用を行えるでしょう。
電子レシートプラットフォームである「iReceipt」は、レシートという必要性の高いタッチポイントであるため、商品を販売した後も顧客との関係を維持しやすいといった特徴があります。顧客の購買データや行動履歴を把握しやすいので、顧客一人ひとりに応じたきめ細かなアフターケアを行えます。
顧客が商品を購入した後に、電子レシートを通じて「なぜ、その商品を購入したのか」などのフィードバックをもらうことで、顧客の心理を把握することにも役立ちます。顧客の心理的な特性をセグメント化することで、ペルソナの設定やマーケティング施策に活かしていけます。
まとめ
販売力を持つ売り場を作っていくには、顧客の興味・関心を惹きつける演出を行うことが大切であり、商品の陳列やPOPなどに工夫を施す必要があります。さらに、顧客の購買データを分析し来店予測や在庫管理に活かせれば、集客や売上アップにつなげられるでしょう。
実店舗やオンラインストアなどを通じて収集した購買データを一元的に管理し、顧客の属性やニーズに合わせたプロモーションを行っていくことが大事です。電子レシートの導入も含めて、効果的な施策を検討してみましょう。