スマートフォンのアプリを利用して顧客の興味・関心を惹きつけ、つながりを強固にする取り組みが「アプリマーケティング」です。売上の向上につなげていくためには、顧客との接点をつくり、商品やサービスの利用につなげていく必要があります。
この記事では、アプリマーケティングの基本的なポイントを解説し、成功事例を紹介します。
アプリマーケティングの基本的なポイント
アプリマーケティングに取り組むには、重視される理由や得られる効果などを把握しておくことが大事です。それぞれのポイントについて見ていきましょう。
アプリマーケティングが重視される理由
インターネットの普及とスマートフォンの登場によって、オフラインとオンラインの垣根がなくなる時代となりました。そうした流れの中で、顧客との接点をつくるには、アプリマーケティングに取り組むのが有効な方法です。
ニールセンデジタル株式会社が発表した『Nielsen Mobile NetView』によれば、18歳以上の日本人がスマートフォンを利用する時間のうち、アプリの利用が92%を占めていることが分かっています。また、月に1回以上利用するアプリの数は、全体の平均で34.6個です。
顧客の利用目的に応じて、直線的かつパーソナルなコンテンツが用意されたアプリの方が、より多くのタッチポイントを生み出します。利用頻度の高いアプリを提供することで、顧客との良好な関係が築きやすくなるため、アプリマーケティングが重視されています。
取り組むことで期待できる効果
アプリマーケティングに取り組むことで、顧客とのコミュニケーションの活性化が期待できます。日常的によく使うアプリを提供すれば、顧客の行動履歴などのデータを収集しやすくなり、囲い込みにつなげていけます。
また、自店のアプリを提供することで、自然な形で情報発信を行えます。すでに顧客となっているユーザーに対しては、プッシュ機能を活用してキャンペーン情報やセールのお知らせなどを配信でき、リピーターの獲得につなげていけるでしょう。
顧客の理解度を高め、世界観を共有していくことによって、ブランディングの強化にも結びつけられます。そして、アプリに登録してもらうことで、顧客の属性や趣味・嗜好、アプローチのタイミングなどを把握できるので、きめ細かなコミュニケーションをとれるようになるでしょう。
アプリマーケティングを成功させるコツ
アプリマーケティングを成功させるには、よく使われるアプリ機能や具体的な進め方、成功事例などを把握しておく必要があります。どのようなポイントを押さえておくべきかを解説します。
よく使われるアプリの機能
アプリにはさまざまな機能が備わっていますが、小売業でよく使われるものとしては次のようなものが挙げられます。
- クーポン機能
- スタンプ、チェックポイント機能
- プッシュ通知機能
- セグメントによる分類機能
- スマートフォン決済機能
- 会員カード など
アプリのクーポン機能を活用するには、顧客に支持されるクーポンを提供できるかが重要です。デジタルクーポンは顧客一人ひとりに合わせたアプローチが行えますし、利用状況を追跡できるという特性があります。
スタンプやチェックポイント機能は、来店するたびにポイントが貯められる機能であり、来店の一つのきっかけになるでしょう。プッシュ通知機能は、ポップアップなどを利用して情報発信を行う機能であり、スマートフォンを顧客が見ていないときでも通知で知らせてくれます。セールのお知らせなどタイムリーな情報を伝えるのに役立ちます。
セグメントによる分類機能とは、顧客データなどを細かく分類する機能であり、一人ひとりに合った商品情報を提供することで購買意欲を高めることに結びつけられます。そして、スマートフォン決済機能があれば、ユーザーは手軽に決済が行えるでしょう。
支払いがスムーズになるだけでなく、店舗側にとっても売上管理を行いやすくなり、双方にとってメリットがあります。また、アプリで会員カードを表示できる機能を搭載していれば、店舗側は発行コストを削減できるので大きなメリットとなります。
アプリマーケティングの進め方
アプリマーケティングを成功させるには、まずKPI(重要業績評価指標)をきちんと設定することが求められます。アプリマーケティングにおけるKPIにはダウンロード数やアクティブユーザー数などがあり、これを設定するとデータに基づいた効果測定を行いやすくなります。自店の状況を踏まえたうえで、現実的なKPIを設定してみましょう。
次に、せっかくアプリを作成してもダウンロードをしてもらわなければ仕方がないので、SNSなどを活用することも大事です。一口にSNSと言っても、ターゲット層によって適したものは異なるため、よく利用されるSNSで情報発信を行ってみましょう。
そして、SNSと並行して、WEB広告などの有料広告やブログなどで宣伝していくことも大切です。積極的な情報発信は、自店のブランディングにもつながるので、継続的に取り組んでみてください。
アプリマーケティングの成功事例
アプリマーケティングを成功に導くには、すでに実行している企業の事例から学ぶことが大切です。「無印良品」と「カインズ」の事例を解説します。
無印良品の成功事例
無印良品の「MUJI passport」というアプリは、購入時・来店時にポイントを付与したり、最寄り店舗や在庫の検索をしたりできる機能を備えています。アプリ会員の購入単価は、アプリを利用しない顧客に比べて2倍ほど高くなるという成果を得ており、アプリマーケティングによるロイヤルカスタマーの獲得に成功したモデルだといえます。
また、商品についてWEBサイトでコメントを投稿したり、レビューを書き込んだりしたときもポイントが付与されるので、多くのユーザーからの支持を集めるきっかけにつながっています。優待価格で買い物ができるクーポンなどを配信したり、ほしい商品の在庫がある最も近い店舗を案内したり機能がアプリには備わっており、こうした顧客体験の提供によって、店舗レジでアプリを提示する会員は来店客全体の12~13%を占めるようになり、競合他社と比べてもアプリのダウンロード数が多いという結果を出しています。
そして、無印良品のアプリはMAU率(アプリを1ヶ月に1回でも利用したことがあるユーザーの割合)が80%以上と高い水準です。アプリの利用率を高める取り組みを行う一方で、購買データなどを継続して収集することで、顧客の囲い込みに役立てる施策にもつなげています。
カインズの成功事例
ホームセンター事業を行うカインズでは、2014年からリニューアルした新たなアプリを提供しています。会員カード・チラシや商品ページの閲覧・最新情報のお知らせなどのさまざまな機能がありますが、顧客がほしい商品を見つけやすくするために独自のアプリを開発しました。
ホームセンターは取り扱っている商品数が多いことから、「ほしい商品がどこにあるのか分からない」「在庫があるのか、店舗に行ってみないと分からない」といった顧客の不満がありました。一方で、店舗スタッフにとっても売り場の案内や在庫の確認といった作業は接客業務の約8割を占めていたため、接客の効率化が課題としてあったのです。
顧客・店舗スタッフ双方の課題を解消するためにアプリを導入し、顧客によりストレスを感じない買い物体験をしてもらうとともに、接客業務の質の向上につなげています。また、アプリをリニューアルしたことで、「CAINZ PickUP」と呼ばれる商品の取り置きサービスもスタートさせました。
このサービスは、事前にアプリで商品を注文することで、最短で注文当日に店舗に設置されたロッカーで商品を受け取れます。送料がかからず、実際にその場で商品を確認してから購入できる顧客体験を提供することで、来店数の増加や売上のアップにつなげています。
電子レシートも活用してみよう
アプリマーケティングを考えるときは、電子レシートの活用もあわせて検討すると良いでしょう。電子レシートを導入することで購買履歴というパーソナルで利用価値の高いコンテンツを提供でき、解約率低下につながります。
電子レシートプラットフォームの「iReceipt」は、レシートという必要性の高いタッチポイントを活用することで、商品を販売した後も顧客との良好な関係を維持することに役立ちます。アプリと電子レシートを組み合わせることで、顧客一人ひとりに合わせたアプローチを効率的に行えるようになるでしょう。
まとめ
スマートフォンの普及によって、アプリを活用したマーケティングの重要性はますます高まっています。アプリにはさまざまな機能を搭載できるので、自店の顧客やターゲット層に合わせた積極的なアプローチを行うことに役立てられるはずです。
また、あわせて電子レシートも導入すれば、顧客のニーズを細かく把握でき、効率的なマーケティング施策を実行することにつなげられるでしょう。