店舗の運営においては、家賃や人件費などの固定費のほかに、商品の仕入代金や消耗品費などの変動費といった経費がかかります。一口に経費といってもさまざまなものがあるので、業績に影響が出ないように減らすには工夫が必要です。
この記事では、効率的に経費を削減するための方法やポイントなどを解説します。
経費を削減するときの基本的なとらえ方
会社や店舗を維持するためのコストを考える際は、まずどのような経費があるのかをよく把握しておく必要があります。経費削減のポイントとあわせて見ていきましょう。
経費削減の対象となる項目
一口に経費といっても、さまざまな種類があるので目的別に経費を整理してとらえることが大切です。経費の削減対象として考えられるものとしては、次のものがあげられます。
目的別の経費 | 主な勘定科目 |
---|---|
バックオフィス業務に関する経費 | 消耗品費、備品購入費、通信費、水道光熱費、新聞図書費など |
営業に関する経費 | 広告宣伝費、人材教育の費用、旅費交通費など |
固定資産や従業員に関する経費 | 減価償却費、事務所の家賃、福利厚生費など |
経費は事業を行っていくうえで欠かせないものですが、経費を無駄なく効率的に使えているか定期的にチェックすることが重要です。経費を抑えるためといって、やみくもに減らしてしまえば、業務に支障が出ることもあるため、必要な経費が何かを慎重に見極めるようにしましょう。
経費を削減するためのポイント
小売店の場合、店舗の経費を効果的に削減するためのポイントとしては、細かな部分を減らそうとするよりも、まずは大きな成果が見込める部分に手をつけたほうが良いでしょう。経費削減の効果が目に見える形で現れなければ負担ばかりが感じられ、継続して取り組むことが難しくなるからです。
経費削減は何より、従業員の理解と協力が必要になります。むやみに経費を削減しようとすれば、モチベーションの低下につながる恐れがあるため、事前に丁寧に説明し、コミュニケーションを取っておくことが欠かせません。
特に給与や福利厚生に関する部分は従業員にも直接かかわってくるものであるため、了解を得ずに削減してしまえば労働環境の悪化を招きやすくなるでしょう。また同様に、顧客へのサービスに関する部分(カスタマーサポートなど)を減らしてしまえば経費は削減できても、売り上げに影響が出る恐れがあるので注意が必要です。
経費を削減していくうえで重要な点は、「業務効率化」につなげる視点で取り組んでいくことだといえます。紙の書類をデジタル化するペーパーレスを推進したり、クラウドの仕組みを活用して取引先とのやりとりを円滑化したりすることで、経費の削減を図りましょう。
経費削減で取り組みやすい方法
効果的に経費削減を行うには、具体的な手段を把握しておくのが大切です。経費削減に取り組む目的や目標値などを明確にして進めてみましょう。
経費を上手に減らすための4つの方法
経費をうまく減らしていく具体的な方法としては、以下の4つがあげられます。
- アウトソーシングを活用して、固定費を流動費化する
- 優良顧客へのアプローチを優先して、販促費や宣伝費を削減する
- 業務の最適化やマニュアル化によって、人件費を抑制する
- ペーパーレス化やIT化を進めて、経費の無駄を減らす
まず時期によって業務の忙しさに変動がある場合、ピーク時に合わせて必要な人員をそろえようとすれば、人件費がかさんでしまいます。店舗が繁忙期に差し掛かっているときは、外部リソースを上手に活用してアウトソーシング化を進めることで、人件費などの固定費を流動費化するのが可能です。
顧客へのアプローチについてですが、むやみに集客を行おうとして広告を打つのはコストが膨らむ原因になりやすいでしょう。自店のターゲットが誰なのかを改めて見直し、優良顧客に絞ってアプローチを行うことで、販促費や宣伝費などをうまく削減でき、再来店をしてもらえるきっかけを作りやすくなるでしょう。
そして、業務が忙しいときであっても、人的リソースの不足を従業員の残業で補おうとすれば人件費が膨らむ恐れがあります。業務にあまり慣れていない従業員でも問題なく作業を進められるようにマニュアルを作成し、業務の最適化を図ってみましょう。
さらに、業務のペーパーレス化やIT化を積極的に推し進めることによって、業務の負担が軽減し、結果的に経費削減につながる場合もあります。不要な作業を減らしていくことで、経費を減らすだけでなく業務の効率化にもつながるはずです。
削減する目的や目標値をきちんと伝える
経費削減を進めるときに気をつけておきたいポイントは、支出の抑制によって経費を減らすのか、業務効率を高めることで経費を減らすのかによって取り組む方向性が異なる点があげられます。目的に沿った形で取り組みを進めなければ、思うような成果を出しづらい部分があるでしょう。
支出の抑制を念頭に置く場合は、従業員が日々の業務において無駄な支出を少しずつ減らせるようにアプローチを行う必要があります。従業員からの意見も取り入れながら、実現できるルールを定めましょう。
一方、業務の効率化を狙った経費削減であれば、仕事の進め方そのものに影響を与えることになります。ペーパーレス化やIT化といった取り組みは、具体的な数値目標や期間などを盛り込むことが重要です。
いずれにしても、店舗の関係者のあいだで綿密なコミュニケーションを取りながら取り組んでいきましょう。
小売業ならペーパーレス化がおすすめ
実店舗を構えた小売業などの場合であれば、レシートを電子化することで経費の削減につなげられるだけでなく、多くのメリットが得られます。具体的には、レシートロールの購入費用やレシートプリンターのメンテナンス費用、事業ゴミを処分する費用などが削減できます。
また、電子レシートを導入することは事業者だけでなく、消費者にとってもメリットとなります。紙のレシートを保管する必要がなくなり、Webを通じていつでも好きなときに買い物履歴などを確認できます。
アプリを通じて、セールやキャンペーン情報を配信すれば、効率的な販促活動にもつながるでしょう。小売業を営んでいれば、レシートに関するコストは継続的にかかるものなので、効率化していくことが大切です。
まとめ
店舗を維持するためにかかる経費を上手に削減できれば、コストを減らすだけでなく、業務の効率化にもつなげていけます。単に支出を減らそうとするのではなく、ペーパーレス化やIT化などを通じて、これまでの業務の進め方を見直してみると良いでしょう。