リレーションシップマーケティングとは、顧客と良好な関係を中長期にわたって築くことで優良顧客になってもらい、顧客の生涯価値(Life Time Value)を最大化するマーケティング手法を指します。顧客と良い関係を保ち続けることは、さまざまな効果をもたらすでしょう。
この記事では、リレーションシップマーケティングの具体的な手法や得られる効果、メリット、事例などを解説します。
リレーションシップマーケティングとは?
リレーションシップマーケティングについて正しく理解するには、言葉の定義を押さえておくことが肝心です。重視される理由やメリットも含めて解説します。
リレーションシップマーケティングの定義
リレーションシップマーケティングとは、顧客と中長期的な信頼関係を築くことで優良顧客になってもらうマーケティング手法のことを指します。商品やサービスの市場シェアを高めることよりも顧客との関係性を深めることを重視しており、顧客の1人あたりの生涯価値(Life Time Value)を最大化することを目標とする考え方です。
1983年にレナード・ベリーによって提唱されたことがきっかけで広まった考え方であり、考え方の背景には「売上の80%は上位20%の優良顧客が生み出している」という「パレートの法則」があるとされています。
新規顧客の獲得にはコストや時間がかかるため、リレーションシップマーケティングを軸足とすることで既存顧客との関係を深めていき、ロイヤルカスタマーの育成につなげていくことが大切だといえます。
リレーションシップマーケティングが重視される理由
リレーションシップマーケティングが重視される理由として、テクノロジーの進化やヒット商品のサイクルの短さ、競合となる企業が業界を超えて複数存在していることなどがあげられます。
競合他社との激しい競争のなかで売上を安定させていくには、自社の商品やサービスを利用している顧客との関係性を深めていくことが欠かせません。新規顧客を開拓しようとしても、実際に成果へ結びつくには多くのコストと労力がかかります。
そのため、既存顧客との関係性を深めることで自社のファンとなってもらい、優良顧客となってもらうほうが売上の向上につながりやすいでしょう。限られたリソースのなかで顧客へのアプローチを最大限に行っていくには、リレーションシップマーケティングの手法を取り入れることが大事です。
リレーションシップマーケティングに取り組むメリット
リレーションシップマーケティングに取り組むことで、まず顧客1人あたりの利益を最大化できます。優良顧客に対して積極的なアプローチをかけることで、顧客の年間平均購入額や1回あたりの購入額を高めることができ、顧客単価を上げていけるでしょう。
顧客単価が向上すれば、顧客数がそれほど多くなくても売上を安定させられます。加えて、優良顧客が自社の商品やサービスを宣伝してくれることにより、口コミによる新規顧客の獲得にも結びついていくでしょう。
そして、日頃から顧客と接する機会を増やすことによって、顧客の意見をいち早く知ることができます。顧客からのフィードバックを商品開発や販促に活かすことにより、顧客に支持されるサービスの提供や店舗の構築へ繋げることができます。
リレーションシップマーケティングの手法
リレーションシップマーケティングは具体的に、「データベースマーケティング」と「アカウントベースマーケティング」に分けられます。それぞれの特徴について見ていきましょう。
データベースマーケティングの特徴
データベースマーケティングとは、顧客の個人情報・属性・購買履歴・アンケートへの回答などさまざまな情報をデータベースとして収集・保存・分析する手法を指します。この手法を用いる目的として、新規顧客の獲得ではなく、既存顧客との中長期的な関係構築があげられます。
そのため、顧客の一人ひとりの好みにマッチングした商品やサービスの提供を図ることができ、自ずときめ細かなアプローチにつなげていけるでしょう。顧客の購買履歴などから購買行動などを分析し、適切なタイミングで必要なアプローチができます。
アカウントベースマーケティングの特徴
アカウントベースマーケティングとは、顧客企業(アカウント)ごとにマーケティング活動を行うBtoBビジネスにおける手法を指します。これには優良企業をはじめの段階で絞り込み、ターゲットに合わせた戦略的なアプローチを実行することが欠かせません。
見込み顧客の量よりも質を重視することで、どの企業に対して集中的にアプローチをかけていけば良いかが見えてくるでしょう。限られたリソースを最大限に活用するために、営業部門などと連携しながら取り組んでいくことが大切です。
リレーションシップマーケティングの成功事例
リレーションシップマーケティングを成功させるには、すでに導入している企業の事例から学ぶことが大切です。ここでは、3社の事例を紹介します。
Salesforce
CRM(顧客管理システム)ツールの販売において高いシェアを持つSalesforceでは、顧客に対して一方的に売り込みを行うのではなく、自社の製品やサービスの良さを広めるためにリレーションシップマーケティングに取り組みました。メディアへの掲載、顧客の口コミ、無料トライアルなどの取り組みを通じて顧客との信頼関係を構築することに力を注いでいます。
Salesforceの製品を活用するスキルを習得するコミュニティとして、「Trailblazer Community(トレイルブレイザーコミュニティ)」が設けられています。TrailblazerとはSalesforceの定義する先駆的な取り組みを行う人々や組織であり、このコミュニティでは先駆者の知見を学んだり、アイデアを出し合ったりする場として利用できる他、世界中の顧客の声を拾い上げる仕組みを構築しているのが特徴です。顧客自身がほしい機能などを提案できる場が設けられていることで、迅速にサービスの改良を行えているといえます。
Amazon
ネット通販大手のAmazonでは、あえて顧客と一定の距離感を保つことで、顧客と長続きする関係を構築しています。必要以上におすすめの商品を紹介することを避け、適度なレコメンドによる程良い距離感の維持に努めているのが特徴です。
オンラインが主体のビジネスであるからこそ、必要以上に個人情報を収集しようとしてはかえって怪しまれてしまいます。世界各地に事業を展開している企業であるがゆえに、適切な距離感で顧客との関係を構築する姿勢が備わっているのです。
アラスカ航空
アラスカ航空では、カスタマーサービスを何よりも優先する社風ができています。リレーションシップマーケティングの基本であるマイレージプログラムは、多くの航空会社で取り入れられており、アラスカ航空でも実施されています。
他の航空会社と同様に、アラスカ航空のマイレージプログラムでも、飛行距離に応じてマイレージが加算されます。さらに、豊富な特典を提供しているため、顧客満足度の高さに繋がっています。
カスタマーサービスにおいては、社員が会社のポリシーに固執せず、状況に合わせた判断を行えるような仕組みづくりを行っています。顧客一人ひとりとしっかり向き合っていく姿勢を見せることで、リレーションシップマーケティングを実現しているといえるでしょう。
電子レシートはリレーションシップマーケティングに役立つ
電子レシートの導入は、リレーションシップマーケティングの活用に役立ちます。どのようなメリットがあるのかを解説します。
電子レシートを活用するメリット
電子レシートを導入すれば、ユーザーはスマートフォンなどから商品やサービスの購買履歴をいつでも確認できます。家計簿との連携によるデータの利活用だけでなく、各種キャンペーンへの参加など多くのメリットを得られます。
また、企業としても電子レシートの導入によって印刷コストなどを抑えられるだけでなく、顧客からのフィードバックを迅速に受け取れるため、サービスの改善に取り組みやすくなります。資源の削減にもつながり、企業イメージがアップすることで顧客との関係をより緊密なものにできるでしょう。
つまり、電子レシートはリレーションシップマーケティングのツールとして、大きく役立つものなのです。
iReceiptの特徴を紹介
電子レシートプラットフォームの「iReceipt」は、顧客との関係構築を効率良く進められるサービスです。顧客の属性に合わせた各種キャンペーンや割引クーポンの配布などが実施できるため、適切なタイミングで必要なアプローチを行えるでしょう。
また、顧客から送られてくるフィードバックをすぐに知ることができるので、商品の選定や販促などへ迅速に活かせます。顧客の目線に立って必要なアプローチを考えていくことが重要なリレーションシップマーケティングにおいて、さまざまなシーンで「iReceipt」を活用できるでしょう。
まとめ
新規顧客の開拓には、多くの手間やコストが発生します。そのため、売上の向上を求めるなら、既存顧客へのアプローチの仕方を見直すほうが良い場合もあるでしょう。
既存顧客との中長期的な関係構築を図るリレーションシップマーケティングを活かしていけば、優良顧客の育成につなげていけるはずです。電子レシートを活用して、顧客と良好な関係を築いていきましょう。