従来のWEB広告は、ユーザーの閲覧履歴を元にしたCookieを利用したものが主流でした。しかし近年ではプライバシー保護の観点から、Googleをはじめとした企業で広告のあり方について見直しの動きが広がっています。
なかでも小売業で注目されているのが、リテールメディアです。この記事では市場動向や成功事例などを紹介しつつ、小売業が今後どのようにリテールメディアを活用していけばよいかを解説します。
リテールメディアとは?
リテールメディアとは、小売店が持つオフラインの販売データをWEBメディアや広告配信などに活かす手法のことを指します。基本的な特徴やどのような影響を与えるものであるかを見ていきましょう。
リテールメディアの基本的な特徴
リテールメディアとは、小売店が持っている顧客の購買データや行動履歴などのオフラインデータをWEBメディアや広告配信などに活かす手法のことです。アメリカではすでに活発に用いられてきた手法ではありますが、小売事業者にとって新たな収益源となる可能性があることから、近年では日本の小売業界でも注目されています。
従来はオフラインの場でしか活用されてこなかった顧客データを、オンラインで活用する点が大きな特徴です。小売業は多くの顧客データを抱える業種だからこそ、広告事業との相性が良いといえます。
自社の販促だけでなく、新たな収入源の確保という視点でリテールメディアを活用していくことが大事です。
リテールメディアが与える影響
リテールメディアの拡大によって、WEB広告業界にとって大きな影響を与える流れが見られます。従来はWEB上で収集したデータに基づいてターゲティングを行い、広告配信を実施するのが一般的でした。
しかし、リテールメディアではリテーラー(小売事業者)が実店舗で収集した購買データを基に広告配信を行う形となります。そのため、これまで分析できなかった広告効果を詳しく分析できるようになり、販促活動や自ら広告事業者として広告配信を行い、新たな収益源の確保に結びつけています。
今までは広告を配信することで、顧客の興味・関心を引き出し商品の販売に結びつけていましたが、今後は商品の購買を起点とした逆算型のプロモーションや小売業がその強みを生かして広告事業者として展開する流れが生まれているのです。
リテールメディアが注目される理由
リテールメディアが注目されるきっかけとなったのは、GoogleがサードパーティCookieの廃止を発表した点が挙げられます。サードパーティCookieとは、ユーザーの閲覧履歴を基に作成したものであり、アクセスしたサイトとは直接関係がありません。
そのため、ネットサーフィンを行っていると、関連する広告が表示されていました。サードパーティCookieは従来のWEBマーケティングでは大事な機能でしたが、廃止に伴ってリテールメディアが注目されるようになりました。
小売業においてはコロナ禍において実店舗への来客が減った一方で、オンラインストアでの売上は伸びています。オンラインでの販売に活路を見出そうとする小売事業者が増えており、今後も関心が高まっていくことが予想されているのです。
また、小売事業者自身が広告事業者となり、自社で取り扱いのない商品やサービスに関する広告を配信することで、新たな収益源の確保につなげられる可能性もあります。
リテールメディアの市場動向と成功事例
リテールメディアをうまく活用するには、世界や日本においてどのような動向が見られるのかを把握しておく必要があります。また、具体的に活用している企業の事例についても紹介します。
リテールメディアの市場動向
リテールメディアを世界でいち早く成功させたのが、アメリカの小売大手Walmart(ウォルマート)です。広告プラットフォーム事業を新たに立ち上げ、実店舗で収集した顧客情報をマーケティングで活用することによって、数千億円単位で広告収入を得ています。
日本においては、ドラッグストアや家電量販店、コンビニなどがリテールメディアに参入しています。これらの小売店ではポイントカードなどをすでに発行しているところが多く、顧客データを比較的集めやすいといえるでしょう。
また、顧客IDやPOSデータを活用する端末の開発も進んでいるので、リテールメディアの市場はますます活性化しています。顧客が商品の購買に至るまでの行動を把握し、来店頻度などに基づいた広告配信に取り組む小売店が増えていくでしょう。
リテールメディアの成功事例
Walmartはアメリカ国内で5,000店を超える実店舗を構えており、現場の強みを活かした販売戦略を重視しています。先に述べたとおり、新たに広告プラットフォーム事業を立ち上げるに至ったのも、現場で多くの顧客データを収集できるからだといえます。
実店舗のみで活用していた顧客データをオンライン化することで、企業側だけでなく顧客にとってもメリットが生まれているのです。顧客はオンラインサイトで注文した商品をWalmartの店舗で受け取れるようになり、買い物の利便性が高まっています。
また、ECサイト大手のAmazonでは、Walmartとは真逆のアプローチでリテールメディアを展開中です。具体的には自社サイトの広告枠を販売しており、各事業者がその広告枠を購入することで、手軽にリテールメディアに参入できる環境を整えています。
集客の観点では、小売店にとってAmazonのような大手ECプラットフォームの広告枠を利用することはメリットが大きく、高い関心が寄せられているといえるでしょう。
リテールメディアを活用するメリットと今後の展望
リテールメディアを活用することで得られるメリットはたくさんあります。また、今後の展望についても見ていきましょう。
リテールメディアを活用するメリット
リテールメディアを小売店が活用することで、新たな収益源の確保が期待できます。ECサイト上に広告枠を設けることは、費用対効果が高いでしょう。また、各種ブランドにとっては、リテーラーが持つオフラインの顧客IDやPOSデータを用いることができるというメリットがあります。
そして、顧客としては自分の興味・関心にマッチした商品やサービスを紹介してもらえるのがメリットです。リテーラー・ブランド・顧客のそれぞれにとって利点があるからこそ、リテールメディアへの参入をしっかりと検討してみましょう。
リテールメディアの今後の展望
リテールメディアは今後さらに発展していくことが見込まれており、早い段階で検討することが必要な分野です。従来のWEB広告市場は縮小傾向にありますが、一方でリテールメディアの市場は拡大しており、小売店が活路を見出す一つのきっかけとなるでしょう。
有効な施策を実行していくには、すでに多くの店舗で導入されているデジタルメディアの機能拡張を図っていく必要があります。従来の顧客データに加え、クレジットカード機能やオンラインストアとの連携などが実装される流れとなっており、顧客の購買データや行動データを収集しやすくなっています。
顧客がデジタルメディアを頻繁に利用するほど、リテーラーは精度の高いマーケティングを行うことができます。業界全体や競合他社の動向などを踏まえたうえで、リテールメディアへの参入を検討してみましょう。
まとめ
リテールメディアは従来のWEB広告に代わるマーケティング手法として注目されており、顧客データのオンライン化が前提となります。新たな収益源の確保やオンラインストアを展開するきっかけになる場合もあり、いかに顧客データを活用していくかが重要だといえます。
コロナ禍の影響によって顧客の購買行動にも変化が見られており、顧客を起点としたプロモーションを行っていくことが必要です。リテールメディアの基本的な特徴を押さえたうえで、自社に合った取り組みを進めてみましょう。